『生』パンって何?

 この数年、「生」何とかって、良く耳にするようになりました。

一例を挙げてみると、「生」何とかパンって聞いたことがありますよね。

ところで、「生」のパンって、どういうことでしょう。

 もともと『パンは、製法工程において高温で焼成することが必要であり、「生」の商品なんてあり得るわけはない』ということは、多くの皆さんにご理解いただけるのではないでしょうか。

では、皆さんが普段目にする商品や広告等における「表示」については、何ら制限はされていないのでしょうか。

景品表示法って聞いたことがありますか?

 「不当景品類及び不当表示防止法」(以下景品表示法)という法律があることをご存知でしょうか?

この法律において、

「表示」とは、『顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示』(第2条第4項)であって、

『商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付した物』『見本、チラシ、パンフレット、説明書面』『ポスター、看板』、『新聞紙、雑誌その他の出版物、放送』『インターネット、パソコン通信』等による広告・表示をいう(「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」)とされています。

文字が多くて読むのが面倒だと思われるでしょうけど、簡単に言ってしまえば、皆さんが普段目にしている広告や宣伝と言われるものは、ほぼ規制の対象となる可能性があるということになります。

 では、どのような内容の「広告・表示」が規制されているのでしょうか。

同じく「景品表示法」を見てみましょう。

第5条において、事業者は,自己の供給する商品または役務の取引において、「品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良である」、「事実に相違して」「同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良である」と示す表示であって、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示をしてはならない、とされています。

つまり、ざっくり言うと、広告や商品パッケージなどに、「実際以上に凄く優れている」とか、「そんな事実はないのに、他の商品と比べて凄く優れている」として、不当に顧客を集め、消費者の正しい選択を阻害するおそれがあるような表示をしてはいけないということですね。

食品パッケージなどの印刷文を読んでいますか?

 さらに、パンの表示に関しては、「食品表示法」という法律も検討する必要があります。

食品表示法においては、食品等定められた区分ごとに、名称、アレルゲン(食物アレルギーの原因となる物質)、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量・熱量、原産地などのうち、「消費者が安全に摂取し、及び自主的かつ合理的に選択するために必要と認められる事項」などを内容とする表示の基準が定められているのです。

「アレルギー表示」って聞いたことがありますよね。

 また、「食パン」については、関連する公正競争規約というルールが定められています。

ちょっと難しくなりますが、できるだけ簡単に説明してみましょう。

公正競争規約とは、「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)第31条に基づく協定または規約をいい、景品表示法第31条の規定により、公正取引委員会および消費者庁長官の認定を受けて、事業者又は事業者団体が表示または景品類に関する事項について自主的に設定する業界のルールのことです。

 包装食パンの取引における表示に関しては、日本パン公正取引協議会において、「包装食パンの表示に関する公正競争規約」が定められています。

同協議会のホームページによれば、この規約の参加者は、「包装食パンを製造する事業者、輸入して販売する事業者、製造を他の事業者に委託して自己の商標等をつけて販売する事業者」であって、「現在約70社」とされています。

 この規約のなかで、「包装食パン」とは、「パン生地を食パン型に入れて焼いたもので」「製造所で放冷又は冷却後包装し、販売のために小売店に出荷される食パンをいう」と規定されていますので、その規定に該当する「パン」にのみ当該規約は適用されることになります。

 また、同規約第6条(不当表示の禁止)においては、『客観的な根拠に基づかない「ナチュラル」、「天然」、「自然」、「生」等当該商品の品質が優良であることを意味する表示』等をしてはならないとされています。

さらに、「ナチュラル」、「天然」、「自然」等については、「天然の原材料を使用したことが具体的に立証できること」、そして、「生」等については、『「生クリーム」等『生』との表示が慣用的に用いられている原材料を使用したことが立証できること』が客観的な根拠として例示されています。

 つまり、『慣用的に「生」という表示が用いられている原材料を使用したことが証明できる場合にだけ、「生クリーム」などといった表示ができるようにしよう』と自主的な規制を定めているのです。

 もちろん、たとえ製パン業を営んでいても、「包装食パンの表示に関する公正競争規約」に参加していなければ、当該公正規約に拘束されることはないわけですが、そうかと言って、何らの制限なく広告・宣伝等に表示して良いということでもありません。

消費者の皆さんから見た場合、その違いはきちんと理解してもらえるのでしょうか。

企業がやるべきこと。

 なお、当然のことながら、公正規約の参加者であるか否かにかかわらず、景品表示法や食品表示法を遵守しなければならないことは言うまでもありません。

 いずれにせよ、消費者の皆さんが商品等の価値や内容などを正しく判断できるようにするために、企業には、商品等の広告・宣伝において、正確な表示や表現を心がけ、正確な情報を提供することが求められているのではないでしょうか。

そのためには、商品の包装や広告・宣伝等における各種の表示や表現などが適正であるのか、何らかの誤認を及ぼすおそれはないのか等、事前に客観的な視点から判断し対応を行うための体制づくりが必要であると考えています。

そして、そうした積み重ねの結果が、企業や商品のブランド価値の向上に繋がっていくのではないかと考えています。

 世の中には、選択の対象となる、たくさんの商品等があふれています。

それって、「本当にこれまでより品質が高い商品なのか」、「他と比べて品質や製造方法が優れているのか」、「本当に必要かつ価格に見合った原材料を使っているのか」等、客観的に考えてみると、判断に苦しむような広告・宣伝の例がまったく頭に浮かばないとは、残念ながら言えません。

「価格に見合った本当に良い商品はどれなのか」、広告・宣伝に惑わされることなく自身で判断できる目を養っていきたいものですね。

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