「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」訴訟について

 2019年8月2日公開の「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」の原案となった、「ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁」(スーパーファミコン専用ソフトとして1992年に発売された)のノベライズ小説である「小説 ドラゴンクエストⅤ天空の花嫁」の主人公の名前等に関する権利に関して、当該小説の著者である久美沙織氏が訴訟を提起したという報道がありました。

 なお、当該著者の見解による事件の経緯は、メディアプラットフォームnoteにて確認することができます。

 上記経緯によれば、当初は、映画において小説の主人公の名前「リュカ」が無断で使用されていること主人公に対する「呼びかけ」(「称号」など別の文言による報道もありますが、ここでは当該著者の文言で記載してあります)である「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」が「リュカ・エル・ケル・グランバニア」と改変して無断で使用されていることを問題として指摘されていたようですが、最終的には後者のみを争点としたとのご主張を述べられています。

 これに対して、映画製作者サイドから見れば、別に原作・監修者がクレジットされていることから、映画の原作となった著作物(脚本など)は、当該原作者の創作によると理解されているのでしょう。

 報道によれば、原告(当該著者)は、当該訴訟において、損害賠償と謝罪広告を求めているとされていますが、当該著者による上記経緯によれば、当初の訴状では、著作者人格権の侵害と映画における謝罪広告などを求めていたと説明されています。

 なお、上記経緯によると、小説化の際には「出版契約」(一般社団法人日本書籍出版協会のひな型が使用されている可能性が高いと思いますが、詳細はわかりません)を締結しているようですから、当該出版契約の内容も気になるところです。                            しかしながら、上記経緯には、訴状が複数あるように理解される記述もあり、また、請求の概要など訴状の内容もわかりませんので、法律的な解釈はもとより本事件の正確な評価を検討することできません。

 いずれにせよ、通常の場合であれば、法務担当者は、訴訟やクレーム等につながらないよう、事前にリスクの管理(洗い出し、分析、評価や対策など)を確実に行い、関連部門と協力して、想定されるリスクをきちんと回避する行動をとることが重要と考えます

本事件を正確に理解するためにも、当該訴訟の今後の進展を待ちたいと思います。                                 今回の訴訟は、いかなるリスク管理の結果発生したものかわかりませんが、企業によっては、訴訟の可能性が予測されても、事前に綿密な法的な評価(今回の訴訟でいえば「著作権等の侵害にはならない」「訴訟になっても勝訴が可能」などの法的な評価)を行い、訴訟の可能性を計算したうえで、プロジェクトを進行させるケースもあります

 その際にも、法務担当者は大きな役割を果たす必要がありますし、問題解決のためには、法務部門の介入に理解のある企業内環境の整備と法務部門に対する経営層の理解、協力が重要な鍵となってきます。